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不備のある論文を教材化する試み:高校生向け教材「ひどい論文」の開発

2026.02.12

1. 研究の背景および目的
高等学校における課題研究などの探究活動では,成果物として論文形式のレポートを作成するため,論文作成上の注意点などをまとめた指導資料が各校で開発・整備されている(例えば,長崎西高,2022)。一方で,教員による指導があっても高校生が作成した論文には,タイトルが研究対象を示すだけ,問いと結論が不在,先行研究の引用がない,などの典型的な不備がみられることが指摘されている(西出,2020)。
模範となるような論文は手本として示すことができるが,不備のある論文は執筆者への配慮の観点から用いることが困難である。そこで,生徒の論文作成を支援することを目的とし,先行研究で指摘されている典型的な不備を意図的に組み込んだ架空の論文教材「ひどい論文」を作成した。課題研究の指導を担当する教員に調査を行い,教材としての価値を検討した結果を報告する。

2. 方法
西出(2020)で示されている不備を中心に,約50か所の不備を組み込んだ「植物の成長について」という架空の論文をA4用紙2枚で作成した。これを用いて,2026年1月にA高等学校において,課題研究の指導を担当する教員を対象に論文作成指導に関する研修会を実施し,その後に質問紙調査を実施した。

3. 結果と考察
「この教材の不備は生徒が作成する論文の不備の傾向に近いものだったと思う」,「この教材を使用することで生徒の論文の不備は軽減されると思う」という質問に対して,9名中全員が肯定的な回答をした。自由記述の内容では,「典型的な例が網羅されている」(課題研究を6回以上担当した教員),「今まで指摘したことのある誤りばかりだった」(課題研究を2~3回担当した教員),「担当している班の中にそういうミスをしているところがあった」(課題研究をはじめて担当した教員)という意見がみられた。以上より本教材は現場の教員が感じ取っている,生徒が作成する論文の不備を再現しうるものであるといえる。

4. 今後の展望
今後は「ひどい論文」教材を使用した群と,模範となる論文を使用した群で,作成される論文の不備の数や論文の質に影響が見られるのかを調査する。また,論文としての中身よりもフォントなどの体裁ばかりにこだわりすぎてしまうことへの対策も必要である。

5. 引用文献
長崎西高等学校SSH企画推進部(2022) 『課題研究の進め方と科学論文の書き方第3版』
Retrieved from https://nagasaki-w-ssh.sakura.ne.jp/wp-content/uploads/2025/01/How_to_proceed_with_task_research_and_how_to_write_scientific_articles.pdf (accessed.2026.01.28)
西出和彦(2020) 「SSH課題研究報告書に見られる問題点とその解決策 ルーブリックで目標を示し,ワークシートで指導する」『 仁愛大学研究紀要人間生活学部篇』,11,43-58.

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